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サウジカップデー2024 平松さとしさん現地レポート


現地時間2月24日、サウジアラビアのキングアブドゥルアジーズ競馬場で行われた1351ターフスプリント(GⅢ、芝1351メートル)にバスラットレオン(牡6歳、栗東・矢作芳人厩舎)が出走した。

ディフェンディングチャンピオンとして出走した今年は、ステーブルメイトのフォーエバーヤング(牡3歳)とリビアングラス(牡4歳)も中東入り。連覇へ向けて調整された。

「競馬場もですが、街中のいたるところにパンサラッサの写真が掲げられていて、嬉しいですね」
そう語ったのは矢作調教師。前年のサウジCを逃げ切ったパンサラッサの写真は、空港の壁面にも張られていたという。同師は続ける。
「バスラットレオンはこれが何カ国目になりましかね……。さすがに旅慣れた感じでどっしりしています。他の2頭は現地入り後、多少体を減らしたように見えたけど、バスラットは日本にいる時と、変わらぬ体つきです」

一昨年にはドバイへ遠征しゴドルフィンマイル(GⅡ)を勝利した。その後、イギリス(サセックスS・GⅠ、4着)、フランス(ジャックルマロワ賞・GⅠ、7着)と遠征。昨年は先述した通りサウジアラビアで1351ターフスプリントを制すと、連覇を狙ったドバイのゴドルフィンマイルは残念ながら4着。秋には韓国へ渡りコリアスプリント(GⅢ)で3着。“世界のYAHAGI”が管理するグローブトロッターの1頭だった。

先に記したように、3頭で渡った今年のサウジアラビアだが、調整は1頭だけ別メニューになる事が多かった。行きたがる面があるため、少しでも落ち着かせて走らせようという意図の感じられる厩舎の姿勢。これに、朝のバスラットレオンが応えるように、リラックスした素振りを見せる。
しかし、最終追い切りでは、やはり行きたがる面を見せた。手綱を取った岡勇策調教助手は、次のように言う。
「他の2頭と比べ、身体に余裕があるので、このくらいで丁度良いと思います。勝った前年と比較して、今年は更に良くなっているというわけではありませんが、良い状態を維持していると言えます。遠征を楽しんでいるという雰囲気があります」
そういった雰囲気を醸し出す事が出来た理由を、伯楽は次のように言った。
「間の詰まっていた前走と違い、今回は少し間を開けてリフレッシュ出来ているのが大きいと思います。間は開いているけど、照準をここに絞って仕上げて来たので、状態も雰囲気も良いんです」
前走は昨年11月19日のマイルチャンピオンシップ(GⅠ、15着)。同月3日のJBCスプリント(JpnⅠ、7着)からの臨戦だった。
また、舞台となるキングアブドゥルアジーズ競馬場の芝1351メートルという距離に関しては、次のように言った。
「昨年、実際に勝ったわけですから、この微妙な距離が彼には合っているのでしょう」
ただ、発表された枠順、すなわち14頭立ての10番というのを聞いた時だけ、少し唇を噛んでみせた。
「作戦としては、今回もとにかく前へ行くだけですからね。そういう意味で、ゲート番に関しては、正直、もう少し内が良かったかな、という気持ちではあります」
 
そのゲートに関しては最後入れをリクエスト。認められた。しかし……。
「癖である後ろ扉を蹴った瞬間にスタートが切られました」
考えられる限りの万全の手は打ったにもかかわらず、最悪のタイミングで前扉が開いた。結果、出負けをしてしまう。すると、次の瞬間には内外からヨラれる形になり、万事休す。序盤から意図した形とは違う、後方からの競馬を強いられた。手綱を取った坂井瑠星騎手が言う。
「調教時、僕は他の馬の背中からバスラットレオンを見る感じだったので、はっきりとした状態とかは分からなかったというのが正直なところでした。でも、レース当日に跨ってみて、良い状態だと感じました。それでも、スタートでああいう形になってしまうと厳しいです」
矢作師も首肯して言う。
「スタートが全てでした。今回、連れて来た3頭の中で、状態面としてはむしろ1番、順調に来ていると思えたくらいでしたけど、ああなってしまうと難しいですね」
結果は10着。残念ながら連覇とはならなかった。

競馬の神様は気まぐれだ。陣営がどれだけ完璧に仕事をして、馬自身がどれほど良い状態に仕上がっても、枠順1つ、天候1つ、スタートや道中のほんのちょっとの流れで、たった1つの用意された栄冠は遠ざかって行く。残念ながらバスラットレオンのサウジアラビアでの連覇はならなかったが、矢作厩舎のことなので、きっとまた巻き返す日が来るだろう。今回の敗戦が次なる飛躍への糧となると、信じたい。