archives
Bijoux Miss'14に見た、二ノ宮敬宇調教師の本音~Bijoux Miss'14の勉強・説明会~

1月29日に美浦TC近郊のドリームファームにて行われた
Bijoux Miss'14に見た、二ノ宮敬宇調教師の本音~Bijoux Miss'14の勉強・説明会~
を当日ご参加いただけなかった方のために、講義部分を公開!

二ノ宮師の視点で語られる、馬体の見方、
疾病に関すること、そしてBijoux Miss'14の馬見。
お楽しみ頂ければと存じます。
(分かりやすくするためテキスト部分は構成の編集をしております。)

 

■Bijoux' Miss14のいるケンタッキー州の環境について■



二ノ宮:ケンタッキー州は年末年始のこの時期はマイナス20℃くらいになり、
アメリカでは基本は昼夜放牧をしているので、
それほどの寒さでも基本は外で過ごします。
マイナス20℃という世界は木が雪や氷柱の重みで、
音を立てて崩れます。
こうした環境でも馬は対応できますし、
だんだん強くなります。


撮影したのは10月頃ですので、産まれてから半年程度経過しています。
産まれた時は、60-70kgなのが、この時期になると200kgとなり、急激に成長します。

こうした厳しい環境ですので、冬毛が出ているのは仕方がないです。

ケンタッキーは生産頭数が25,000頭で、オーストラリアは50,000頭です。
アメリカも昔は多かったが、流産菌が発生し少なくなりました。

7月には、ジュライセールがあり、A.P.Indyなどが出たセールで
日本人が4億とか5億で落札する様子も見られた。、
A.P.Indyも日本人に買われました。
米国生産の80%がケンタッキー州でキーンランドに集中しています。

 

■馬見はパーツではなくバランスで見る■


二ノ宮:馬の見方についてはあとでも述べますが、
まずは全体を見て、馬のバランスを見ます。
前脚、後ろ脚、首、それから全体を再度見て、歩き方を見ます。
全体のバランスを見ることを意識します。


細かい話になりますが、
パーツを見ると悪い所が目立つので馬を選ぶことはできません。
アメリカの馬では脚が曲がっているケースもあります。
X脚になっていたり、O脚になっていたりします。

キングカメハメハも曲がっていますよね。
A.Pインディもそうですし、シアトルスルーも曲がっているし、
曲がっているのを意識してしまうのと馬は選べなくなります。

重要なのは父からの遺伝によるものなのか、
その馬特有のものなのかを見極めること
です。
ですので、私は種牡馬の馬体を見るようにしています。

ですので、
厩舎を開業する際に3カ月程度余裕があったので、
種牡馬を見に行きました。
ミスタープロスペクター
ダンジグ
シーキングザゴールド
を見てきました。


 

■Bijoux Miss'14の父系について■

二ノ宮:Hansenの父はTapitなのですが、
ドラム缶のような芦毛の馬で600キロくらいあった。
種付け料も30万ドルだから、3500万円で今、世界で一番高い馬です。

日本にも何頭か入ってきていて、テスタマッタなどが活躍してる。
非常にスピードがあるのが特徴です。
いまのディープインパクトが2500万円であることを考えてもその凄さがわかります。


 

■Bijoux Miss'14の馬体のバランスについて■

二ノ宮:次に、胴の長さについてですが、
この時期については、詰まっていた方がいいと考えています。

肘から脾腹までの長さが胴になります。
胴の長さを見るときは3頭分したときに、長いか短いかを見ます。

Bijoux Miss'14については、詰まっていますよね。
これは、良い傾向で、最初から伸びた状態ですと
伸びしろがなくなりよくありません。


よく長躯短背と言われますが、
躯幹が長くて、背中が短いのは良いとされています。

Bijoux Miss'14は、全体のバランスがいいですね。
肩の傾斜、腰の傾斜は肩甲骨と”ちょうこつ”の角度で見るのですが、
90度から100度が良いとされています。

き甲の高さ、腰の高さですが、小さい時は腰が上に上がっています。
そして、大人になると、き甲が抜けてきて(上がり)、体全体が大きくなります。


 

■Bijoux Missの馬体診断■


(Bijoux Miss'14 2014年11月10日撮影)

(Bijoux Miss'14 2015年1月11日撮影)

二ノ宮:Bijoux Miss'14については、
立ちもいいし、繋ぎも長いから、
血統面からすればダートでしょうけど、
芝も走っていいような繋ぎ
をしています。
僕たちはバランスを見ます。顔の大きさや耳の大きさもみます。
走っている様子からは顔が小さく見えるのでバランスもよさそうです。

去年の暮れに後ろ脚の外傷があって腫れていますが、
レントゲンを撮って今は腫れも引いています。
正肢勢ですね。
トモも開いていないし、飛節もエースだったり、開いたりしていないからいい
ですね。
Q&A(会員様より当日・事前に質問があった事項についての二ノ宮師の回答)

■良い踏み込みとは■

二ノ宮:良く踏み込みがいいと言いますが、
前脚のあとにトモ脚がどれくらい前に来るかということなんです。
踏み込みがいいというのはトモ脚が前にいくから、
首が前にいく、首が前にいくということはトモがよくないといかない。
トモがよくないと首が頭が高くなってしまう。
首を前に出して、
トモがよくて、前進を使って、
踏み込みがいいのはいい調子。
頭があがってちょこちょこしているのはよくない。
 


■競走馬の疾患について■

二ノ宮:競走馬はみんな病気をもっている。
どこかしら悪い所をケアしながら使っている。
悪いことはあまりいわない。
毎日のようにケアをして、
厩務員は一人2頭面倒を見ている。
朝から見ている。
注射は最近は打たないが色々なケアをしている。
そうしたケアをしながら最高の状態で使うんです。
 


■喘鳴症(ノド鳴り)■

二ノ宮:騎手がよく一括りに敗因としてノド鳴りが・・・と言って悪いイメージがありますけど、
軽度なものや手術で対応できるものなど種類はあります。

咽喉は食べ物をいれるところで、
器官と食道に入るのを分けるのに機能している。
喘鳴症は飛越軟骨の動きが悪くて、
笛に浮くようなに感じにになってしまうと、
息を吸うと鳴るようになります。

他にも種類がたくさんある。
喉頭蓋が奇形になってしまっていたり、
軟口蓋が喉頭蓋の背側(奥側)に変位する
いわゆるDDSPがあったりする。

喘鳴症はひどくなるとなかなかなおらないです。
糸でつって、舌がたれない様にする。
ひどい場合は能力喪失率は50%程度あります。

Bijoux Miss'14についてはそういった症状はないとお聞きしています。)

 

■屈腱炎について■

(下記参照の画像は動画「講義2」をご参照ください。)
 
二ノ宮:馬の脚というのは、管のところに腱があり
腱は大きく外側の浅屈腱(せんくっけん)
と内側の深屈腱(しんくっけん)の2つに分かれます。

(写真を見ながら)
上が浅屈腱(せんくっけん)、
下が深屈腱(しんくっけん)となり、
所謂エビ(屈腱炎)は浅屈腱に多いです。
腱は皮膚の一番外側にあり、脚が沈下すると腱が引っ張られるので断裂します。

グラスファイバーのようなもので、屈腱炎というのは腱断裂をして内出血をした状態となります。

再生することはできないが、
時間が経つと修復されていきます。
元には戻らないが、
いろいろな治療でレースに使える馬になります。
私の厩舎のアクシオンは20%の屈腱炎でしたが、
休ませてケアしたら重賞を勝ちました。
 


以上が、講義1、講義2からの抜粋となります。

講義3は野外に移って行われた馬見講座です。
多少音が聞こえづらい箇所がございますが、
二ノ宮師の馬に対する熱意が感じられ、学ぶところは多い内容となっております。
水野さんも質問をして納得のご様子。お楽しみください。



■横からのチェック■
二ノ宮:馬の真ん中がどこかというと、以前はキ甲のあたりとされていたが、
今では、肋骨12番目あたり言われています。

まず最初に全体的なバランスを見ます。
全体の長さを1/3ずつに分けて
胴の長さを見ます。

正肢勢の馬はそれほどいないです。

前脚については、肘の中心、1/3から下ろした時に、
膝の真ん中を通り、
球節の真ん中を通り、
蹄球の後ろにいくのが正肢勢です。

後脚については、
臀端(でんたん)から下ろした垂線が飛節を通って、
球節の後ろを通って真っ直ぐになります。

少し前になっているのは前踏み肢勢、
この馬の場合は、前が後ろになっていて、
後ろが前になっているので、
集合肢勢と言われます。

特にこれが良いとか悪いとかではなく、そういう肢勢というだけです。

■後ろからのチェック■
二ノ宮:臀端(でんたん)からおろした垂線が、膝の真ん中、
爪の真ん中を通ります。

外にむいているのが外向
内に向くのが内向肢勢

膝から曲がっているとX状。
広がっているとO状肢勢と言われます。

■化骨について■
二ノ宮:注意しなくてはいけないのは
4歳ではここまでしか化骨しきっていないということ。(動画参照)
5歳で化骨が終わるイメージです。
3際では球節の上あたり、
2歳で繋ぎあたりです。
まだまだ化骨が進んでいない状態で馬を使うので、
壊れやすいんです。ですのでケアが必要になります。

■正肢勢の角度について■
二ノ宮:前脚は90°から100°、
トモも90°から100°で
三角形をイメージします。

この三角形が
正角形がマイラー、
鋭角三角形は短距離、
鈍角三角形は長距離と言われます。

爪は3つあり、
蹄骨、血液が通る知覚部、角質部(つめの部分)に分かれます。

前脚の球節からは真っ直ぐでなくてはいけません。
繋ぎは前が45°、
後ろは50°がいいとされます。


臀端(でんたん)から下ろした垂線が
中心を通って、真ん中になるのが正肢勢。
この馬は良い肢勢をしていますね。
Xや開くのはよくないとされています。

馬というのは産まれた時は脚がグチャグチャなんです。
産まれた時は球節が地面につく馬もいます。

サンデーサイレンスの産駒はそれこそ地面に球節がつく馬が多くて、
最初は毛嫌いされたのですが、
走り出したら良いと言われ始めましたね。
仔馬はそういった状態でも30分から1時間で立ち始めます。

■馬見の順番について■
二ノ宮:もう一度おさらいすると、見方としては

正肢勢を基本にして、この馬はどうか横から見ます。

そして、(先ほどのように)後ろの肢勢をみて、

右と左が違うので、反対側から横を見て、
前を見て、
そして、最後に戻って全体のバランスを見ます。

さらに、加えると、
目をみます。
失明などしていないか、目が見えているかどうかなどを確認します。
歯も飼い葉食いに影響しますので見ます。
耳も重要です。反応が悪くないか動きをみる。

そして、繁殖の場合は臀部をみます。
ここでは腰の力を見ます。
(動画のように尻尾を触ると)緊張していると固くします。

昔は、尻尾の付け根を火鉢でやいて
刺激をあたえて反応を見たこともありますね。


最終的にはどうかは歩いてみる。

軽快に歩くかどうかがポイントです。
この馬はトモがフラフラで歩けなかったのを
整体を入れてよくなった状態です。

この馬は肢勢はいいですね。

以上が簡単な相馬です。


いかがでしたでしょうか。
もっと今回は入門編ということでしたが、
馬見をもっと勉強したいというきっかけになれば幸いです。

※当イベントで行われた体験乗馬の様子は下記の動画よりご覧いただけます。


最後に、当イベントで紹介されたリトルゲルダの半妹
Bijoux Miss'14の立ち写真、前、後ろの写真を掲載します。
上記の馬見を活かしてご確認いただければ幸いです。

Bijoux Miss'14 横

Bijoux Miss'14 後ろ


Bijoux Miss'14 前

牝1歳 芦毛 2014.05.17生 米国産
父:Hansen 母:Bijoux Miss (母の父:Buddha)
出資申込
販売総額 2,200万円 / 総口数 400口
一口価格 55,000円

Bijoux Miss’14の血統診断はこちら